世界最大の14億人の人口を誇る中国で急速な少子化が進んでいる。同国の出生数は2017年から4年連続で減少し、2020年の出生数は1,200万人と前年より2割近く減少し、1949年の建国以来最大の落ち込み幅を記録した。
中国の合計特殊出生率は2015年の人口抽出調査で1.05となり、日本の過去最低水準の2005年の1.26を大幅に下回っている。総人口の規模は大きく異なるが、日本よりもはるかに少子化が進行しているといえる。
同国で少子化が進んでいる背景には①30年以上続いた人為的な「一人っ子政策」②出産・子育て・教育費に費用がかかりすぎる-ことなどが挙げられる。
中国政府は2021年5月31日、出産制限を緩和し、子どもを3人まで容認する方針を示した。だが、1人でも産もうとしない現状では、少子化対策の効果は期待できないとの声が多い。
中華圏では出産後、育児資格などを持つスタッフが24時間常駐し、子どもの面倒をみたり、母子へのマッサージを施したりするホテル型施設や、専用の家政婦を利用する人が多い。北京市中心部では安い施設でも1カ月約6万元と高額だ。
子どもが成長すれば今度は教育費が重くのしかかる。英金融大手HSBCの2017年の調査では、香港などを除く中国本土で子ども1人の大学卒業までに掛かる教育費は平均4万2,892ドル(約470万円)。政府系シンクタンク、上海社会科学院の2019年の調査によると、上海市では中学校卒業までに1人当たり約50万元(約860万円)掛かる。
こうしてみると、政府が結婚適齢期の若者に出産制限撤廃をはじめ、子育て支援・住宅購入支援・教育費軽減など政府が大胆なコスト負担でもしない限り、打開策はないようにみえる。
中国の2020年の人口は14億1,178万人と、前年の14億5万人(推計値)から増加したものの、数年以内に減少に転じるとの観測が広がっている。中国経済は、人口増も背景に急速な経済成長を続けてきた。だが、少子化に歯止めが掛からず、高齢化が進行し働き手が減少する中、国として医療・介護の社会福祉費だけが膨らんでいけば、現在の日本とほとんど変わらない。いや、人口の規模が大きく異なるだけに、経済成長が大きく鈍化してきたとき、とても日本の比ではない、事態は深刻化することが予想される。