コロナ禍に逆風スーツがなぜ売れる 作業着スーツを展開

オアシススタイルウェア 潜在需要の掘り起こしに成功!
産業界から個人の生活まであらゆる領域まで、そのありようをすっかり変えてしまったコロナ禍。勤務スタイルも大半が在宅に切り替わろうかという中、環境としては全く”逆風”のはずのスーツの売り上げを急激に伸ばしている企業があります。2015年、水道工事を手掛けるオアシスソリューション(本社:東京都豊島区)の新たなプロジェクトとして立ち上げられ、アパレル業界に新規参入して生み出した事業。2017年12月に新会社が設立された、「WWS(Work Wear Suit)」(ワークウェアスーツ)のブランドで、作業着スーツの展開を推進するオアシススタイルウェア(本社:東京都港区)です。
作業着スーツと表現しましたが、法人需要でいえば様々な職業のユニフォームとのボーダーレスウェアと呼ぶ方が的を射ているといえるでしょう。ただし、企画コンセプトは毎日洗うことができるスーツで、既存の市場にはなかった商品です。「あればいいのに…」そんな潜在需要の掘り起こしに成功したといえるのではないでしょうか。オフィスでのビジネスシーンでではなく、職場で着用し毎日気軽に洗うことができる作業着スーツは、コロナ禍だからこそ、これまで以上に重宝され支持されたわけです。
そもそもこのプロジェクト立ち上げの目的は、本業の水道業界の技術職を採用しようとすると、50歳以上の応募が多く、若い世代からの応募は極めて少なかったのです。そこで、オアシスソリューション創業10周年記念プロジェクトの全社員を対象にしたアイデア募集に、社歴7年の中村有沙さん(現在のオアシススタイルウェア代表取締役)が応募。中村さんは「スーツみたいなスタイリッシュな作業着をつくることはできないか」と提案した。これを受け、スーツと作業着の境目をなくせば職業観を変えられるかもしれない、との思いから当時のオアシスソリューション・関谷有三社長が決断、同プロジェクトがスタートしました。
とはいえ、着心地がよく、ストレッチ性があって撥水性があり、さらには毎日洗える。これら作業着スーツの求められる要件を満たす生地はなかったため、新しい生地をメーカーと共同で制作に取り組んだといいます。プロジェクト立ち上げから丸2年、「見た目+機能性」、スーツに見える作業着が完成しました。まずは試験的に社員に着用してもらうと、これをみて親会社オアシスソリューションの水道工事のクライアント、三菱地所から物件管理者用のユニフォームにしたいとの依頼が舞い込みます。これにより事業化が決定。オアシススタイルウェアという新会社が設立され、起案者の中村有沙さんが代表取締役に抜擢されました。
代表取締役の中村有沙さんによると、2020年度の売上高は前年度比400%アップで9億3,000万円を達成したといいます。6月下旬時点でWWSを導入している法人企業は1,000社を突破しています。物流ドライバー、内装業者、冠婚葬祭、スイーツ製造事業者など様々な職業・職種のユニフォームに採用されています。
ちなみに、スーツ全体も販売量は減り続けています。ピークは1992年の1,350万着、そして2018年には510万着へ、コロナ禍により2020年には350万着まで減少したとみられています。