大阪大などの研究チームはこのほど、病気で声を失った患者の口元の動きから話そうとしている内容を人工知能(AI)で推定し、本人そっくりの人工音声を流す「読唇アプリ」を開発した。これを使えば患者の意思疎通が楽になるとし、チームは実用化を目指す。大阪大病院で患者に試験的に使ってもらうことを計画している。
チームは日本語の5種類の母音に加え、前後の音の並びによって変化する口元の動きを16種類に分類した「口形コード」という手法に着目。まず話している口元の膨大な映像と、その動きに対応するコードをAIに学習させ、口元の動きをコードに変換する手法を開発した。さらに別のAIを使い、コードを自然な日本語に置き換える2段階のシステムで、話そうとしている言葉を推定できるようにした。これらと、事前に録音した患者本人の声をもとに、人工音声でそっくりに再現するシステムも組み合わせ、アプリを完成させた。
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マイナ保険証で25年度から電子カルテ 病院間で共有へ
政府は、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を利用する患者の電子カルテ情報について、医療機関同士で共有する新システム「電子カルテ情報共有サービス」の運用を、2025年度に始める方針を固めた。この新システムは厚生労働省所管の法人が管理する。
これにより、各医療機関から電子カルテに記録された病名やアレルギー、感染症と生活習慣病の検査や健診結果、処方箋の情報が集まり、データベースに蓄積される。データの保存期間は3カ月〜5年間となる。全国の医療機関がデータを閲覧するためには、患者の同意を得る必要がある。
新システムが導入されると、救急患者の症状と、データを突き合わせて診断したり、初診患者の検査結果を、過去の数値と比べて病状の変化をみたりすることが可能になる。また、アレルギー情報は安全な薬剤の処方に役立つ。
阪大チーム がん免疫療法の副作用のたんぱく質を特定
大阪大のチームはこのほど、「がん免疫療法」の副作用と関わるたんぱく質を、マウスを使った実験で突き止めたと発表した。論文が科学誌サイエンスに掲載された。同チームは、このたんぱく質の働きを抑えれば、がんを攻撃する免疫細胞によって起きる副作用を軽減できる可能性があるとしている。
免疫細胞には、ウイルスやがんを攻撃して体を病気から守る「キラーT細胞」などと、逆にキラーT細胞などの働きにブレーキをかけて過剰な免疫反応を抑え、結果的にがんを保護することもある「制御性T細胞(Tレグ)」が存在する。免疫療法では、これらの免疫細胞に働きかけ、効果的にがんを攻撃させる複数の薬が開発されているが、全身で炎症が起きるなどの副作用が出やすいことが課題となっている。
ブタの腎臓 サルに移植成功 国内初の臨床応用めざす
腎臓病の根本的治療法確立に向け、この一環として、明治大学発のスタートアップ、ポル・メド・テック(所在地:川崎市)は11月25日、他の動物に移植しても拒絶反応が起きないように遺伝子を改変したブタの腎臓を、カニクイザルに移植し、成功したと発表した。
鹿児島大学、京都府立医科大学、ポルメド社などが24日、共同で実施した。カニクイザルの腎臓を2つとも取り除き、ポルメド社が育成した月齢約3カ月のブタの腎臓1個を移植した。移植した腎臓が機能しているとみられ、移植後、サルの排泄器官から尿が出るのを確認した。
これは国内初の臨床応用に向けた実験で、腎臓病に苦しむ患者への移植技術の確立を目指す。患者への移植は数年後に実現する可能性があるという。今後数カ月間で最大8頭のサルに同様の移植を実施し、患者への移植の具体的な手法や薬の投与方法、適切な体調管理の方法の確立を目指す。
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阪大チーム iPS角膜 年度内に治験へ 患者4人に移植, 視力回復
大阪大のチームは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した角膜細胞のシートを症状の重い目の病気の4人に移植した臨床研究の成果を踏まえ、今年度にも阪大発の新興企業「レイメイ」(所在地:大阪市)が治験を開始し、実用化を目指す。
同チームが行った臨床研究について、全員の安全性が確認され、視力が回復したとする論文が、このほど国債医学誌『ランセット』に掲載されたことを受けたもの。iPS細胞を角膜の透明な細胞に変化させ、円形のシート(直径約3.5cm、厚さ約0.03ミリ)に加工。2019〜2022年、重症の30〜70歳代の男女4人に移植して経過を観察した。治験は患者数を増やすなど、規模を拡大して実施する計画で、再生医療の実用化を加速させていきたいとしている。