「新技術・新開発」カテゴリーアーカイブ

東レ 次世代電池用イオン伝導ポリマー膜を創出

東レ(本社:東京都中央区)は3月11日、イオン伝導度を従来開発品比10倍に向上した次世代電池用イオン伝導ポリマー膜を創出したと発表した。ホッピングサイト構造の改良とサイト数を増強した新規ポリマー設計により、ホッピング伝導型のポリマー膜としては最高レベル(東レ調べ)となる、10ー4S/cm台のイオン伝導度を実現した。
このポリマー膜は、全固体電池や空気電池などの金属リチウム負極電池の実用化を加速させ、電気自動車(EV)や産業用ドローン、UAM(Urban Air Mobility)などの航続距離拡大に貢献する。

京都府立医科大など 今夏, 特殊なブタの腎臓をサルに移植

京都府立医科大学などの研究グループは今夏にも、ヒトに移植することを想定して開発された特殊なブタの腎臓をサルに移植し、安全性などを確かめる研究を実施すると発表した。このグループが同大学、鹿児島大学および神奈川県のベンチャー企業で、ヒトへの臓器の移植を想定して拒絶反応が起こりにくくなる遺伝子操作したもの。
早ければ今夏にも移植を実施し、拒絶反応の有無や腎臓の機能が保たれるかなど、数年かけて安全性や効果を確認したうえで、腎臓病患者への応用を目指したいとしている。

阪大と東北大 がん抗体医薬品開発に道 がん抗体を解明

大阪大学蛋白質研究所、東北大学大学院医学系研究科の研究グループは3月9日、共同でがん細胞だけに結合して正常細胞には全く反応しない抗体の取得に成功し、さらに細胞選択性の理由を結晶構造解析により明らかにしたと発表した。この結果、今後がん細胞のみを攻撃する抗体医薬品の開発への応用が期待される。
グループは数百種にも及ぶ数のHER2に対する抗体を作り出し、各抗体について様々な細胞への反応性を調べた。HER2はヒト上皮細胞増殖因子受容体。がんの治療における標的タンパク質として古くから注目されており、過剰に発現したり活性化したりすることで、細胞の増殖制御ができなくなり、がん化する。

伊藤忠 核融合エネルギー米スタートアップBLF社と提携

伊藤忠商事(本社:東京都港区)は3月7日、核融合エネルギー関連スタートアップのBlue Laser Fusion Inc.(本社:米国カリフォルニア州パロアルト、以下、BLF社)の第三者割当増資を引き受けるとともに、フュージョンエネルギー関連ビジネス、およびBLF社が開発するレーザー技術を応用した関連ビジネスにおける戦略的業務提携契約を締結したと発表した。
BLF社は、高輝度青色発光ダイオードの発明でノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が共同創業者の一人として2022年11月に設立されたスタートアップ企業。自社で開発を進めるハイパワーレーザーを用いたレーザー方式核融合炉の商用化を目指している。

コマツ ナトリウムイオンバッテリー搭載フォークリフト

コマツは3月7日、ナトリウムイオンバッテリーを搭載した電動式フォークリフトのコンセプトマシンを開発し、3月から取引先顧客の現場で実証実験を開始すると発表した。ナトリウムイオンバッテリーを搭載するのは同社として初めてで、フォークリフトへの搭載は世界でも先駆的な取り組み。
ナトリウムイオンバッテリーは①エネルギー密度は低いものの、急速充電が可能②サイクル寿命(充放電を繰り返せる回数)が長いことから、ランニングコストの低減が期待できる③地球上に豊富に存在するナトリウムを用いるため、安定した調達が可能で、将来的にコスト削減が見込まれるーなどが利点。
同社は電動式フォークリフトの選択肢を増やすことで、あらゆる現場の電動化を加速させ、環境負荷低減とカーボンニュートラルの実現に貢献する。

23年の国際特許出願 前年比1.8%減 減少は14年間で初

世界知的所有権機関(WIPO)によると、2023年の特許の国際出願件数は前年比1.8%減の27万2,600件にとどまった。前年に比べ出願件数が減るのは、この14年間で初めて、
国別では中国が引き続き1位だったが、件数は6万9,610件と前年比微減だった。2位の米国は5.3%、3位の日本は2.9%それぞれ減少した。世界的な金利上昇によりイノベーションへの投資資金が回りづらくなっていることが主な要因としている。

西松建設 アサヒ飲料と協業しカーボンネガティブコン開発

西松建設は3月6日、アサヒ飲料とともに製造過程でのCO2の排出量がマイナスとなるコンクリートの開発に着手したと発表した。これはアサヒ飲料の「CO2を食べる自販機」により、大気中のCO2を吸収した特殊材を活用し、コンクリートに練り混ぜることによって、CO2排出量がマイナスとなるカーボンネガティブなコンクリートを実現するもの。両社は十分な強度を持つコンクリート材料となることを確認し、今後実施工への適用に向けた取り組みへ進める。
日本国内での生コンクリート年間出荷量は約7,500万㎥(2022年度)とされる。例えばこのうちの0.1%を開発中のコンクリートに置き換えるだけで、毎年27万本の杉の木と同等のCO2削減効果が見込まれる。これは森林の広さで東京ドーム約77個分に相当する。

SkyDrive スズキと磐田市で「空飛ぶクルマ」製造開始

「空飛ぶクルマ」および物流ドローンの開発を手掛けるSkyDrive(本社:愛知県豊田市)は3月7日、スズキ(本社:静岡県浜松市)の協力のもと、製造子会社Sky Works(所在地:静岡県磐田市、スカイワークス)を通じて、スズキグループの磐田市の工場で空飛ぶクルマの製造を開始したと発表した。
スカイワークスは、従業員の約半数がスズキからの出向で自動車の組立の経験・知見が豊富。2023年9月から空飛ぶクルマの試作および組立手順書の作成など準備を進めてきた。
同工場ではまず大阪・関西万博で飛行を計画している「SKYDRIVE(SD-05型)」、その後、顧客に販売していく製品を順次製造していく予定。

関電 空飛ぶクルマで韓国Solyuと提携, 充電設備を供給

関西電力(本社:大阪市北区)は3月4日、韓国の航空機リース会社、Solyu(ソリュ−、本社:ソウル)と、空飛ぶクルマの充電設備を供給することで業務提携したと発表した。関電、ソリュ−両社は空飛ぶクルマの充電設備のリース先などを探る新たなビジネスモデルにも取り組む。
関電は現在SkyDriveやAerospaceなどの空飛ぶクルマの機体メーカーと連携し、充電設備開発に取り組んでおり、今後とも開発、導入を進め、空飛ぶクルマの社会実装を推進していく。

塩野義のコロナ飲み薬「ゾコーバ」厚労省近く通常承認

厚生労働省の専門家部会は3月4日、塩野義製薬(本社:大阪市中央区)が開発した国産初の新型コロナウイルス感染症の飲み薬「ゾコーバ」について、製造販売の通常承認を了承した。近く厚労省が正式に承認する。
ゾコーバは2022年11月、軽症・中等症患者向けの治療薬として緊急承認されていた。医療機関の治療実績として、体内のウイルス量減少など薬の有効性を示す追加データを踏まえて問題ないと判断した。