「新技術・新開発」カテゴリーアーカイブ

EV普及のカギは切り札「全固体電池」の開発・実用化

2022年は電気自動車(EV)の次世代電池と目される「全固体電池」の開発競争が激化し、国内外の大手自動車メーカー各社はEV普及の切り札として実用化を急いでいる。すでに欧米の主要メーカーはじめトヨタ自動車や日産自動車は、全固体電池の具体的な投入時期を表明、開発に取り組んでいる。果たして、どこが実用化1番乗りするのか?
全固体電池は現行のリチウムイオン電池の約2倍の容量を蓄えることができ、ガソリン車と比べたEVの弱点である航続距離の短さ、充電時間の長さ、電池の経年劣化を解消する次世代電池と期待されている。
トヨタは2020年8月から全固体電池を搭載した試作車で公道を走ってデータを取得しており、2020年代前半にまずハイブリッド車(HV)に採用する予定だ。HVで課題を克服した後、EVにも採用する方針。日産は2028年の市場投入を目指し、2024年には横浜工場内にパイロット生産ラインの導入を計画している。充電時間は現在のリチウムイオン電池に比べ3分の1に短縮することが目標としている。
海外勢では最も開発が進んでいるとみられる独フォルクスワーゲン(VW)は、2025年以降に搭載車を販売すると表明している。メルセデス・ベンツは、全固体電池を開発する台湾の輝能科技有限公司に出資、共同開発すると発表した。早期の実用化につなげたい考えだ。

ゴールドウイン 環境配慮素材の製品開発でBioworksと提携

ゴールドウイン(本社:東京都渋谷区)は1月25日、石油由来の化学繊維に代わる環境配慮素材の製品開発で、植物由来で生分解性のバイオマスプラスチック、ポリ乳酸繊維「Plax Fiber」の改質剤を開発している素材のスタートアップ、Bioworks(本社:京都府相楽郡)と資本業務提携し、製品開発を推進すると発表した。
これまでBioworksで進めてきたPlax Fiberを使用した短繊維の製品開発に加え、今後は協業によりアウトドア・スポーツ用途などで活用が見込める長繊維の開発を進め、2023年から「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」「Goldwin(ゴールドウイン)」等、同社グループが展開するブランドからの製品開発を目指す。

東洋エンジ タイで混合廃プラ油化技術の共同検討を開始

東洋エンジニアリングは1月19日、タイのSCGケミカルズとの間で、SCGケミカルズが60%出資しているCircular Plas Company Limited(CirPlas)が保有する混合廃プラスチックの油化技術の商業化に向けた共同検討に関する基本合意書を締結したと発表した。
CirPlasが保有するプラスチックのリサイクル技術は、触媒を使用することでプロセス温度を下げる省エネルギー・環境配慮型の油化プロセス。また、プラスチック廃棄物を再度プラスチック原料にリサイクルすることから、タイ国内のみならず他の国々のプラスチック廃棄物問題の低減にも寄与することができる。

帝人 廃棄ポリエステル漁網を食器に再生 海洋プラごみ削減へ

帝人は5月にも廃棄漁網のケミカルリサイクル事業を始める。各地の漁業協同組合と連携して廃棄されたポリエステル漁網を年間1,000トン程度回収。専用のプラントで溶解、食器や文房具といったプラスチック製品に再生する。漁業分野で資源を循環する体制を構築して、海洋プラスチックごみの削減につなげる。繊維子会社の帝人フロンティア(本社:大阪市)が販売したポリエステル原料などから製造した「巻き網」を回収する。日本経済新聞が報じた。

JAXA・三菱重工 次期主力ロケット「H3」打ち上げ再び延期

宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が開発中の次期主力ロケット「H3」の打ち上げが延期となる見通しであることが分かった。これまで2021年度中を目指していた。新型エンジンのタービンの一部に見つかった不具合の解消に時間がかかっており、延期は2回目。
H3は全長約63mで、いまの主力ロケット「H2A」の後継機として開発が進められている。汎用品を使うことなどで、打ち上げ費用を約50億円と現在より半減させる目標を掲げている。当初の計画では2020年度の打ち上げを目指していた。

デンカ,東洋スチレン PS樹脂のケミカルリサイクルプラント建設

デンカ(本社:東京都中央区)t東洋スチレン(本社:東京都港区)は1月11日、使用済みポリスチレン(PS)樹脂のケミカルリサイクルプラントを建設すると発表した。年間処理能力は約3,000トン。デンカの千葉工場(所在地:千葉県市原市)敷地内に建設し、2023年度下期の稼働開始を予定。SDGs達成に向け、廃プラスチックの再資源化による脱炭素・循環型社会の構築を目指す。

米メリーランド大 遺伝子操作したブタの心臓をヒトに移植成功

米国のメリーランド大学は1月10日、遺伝子を操作して、拒絶反応が起こりにくくしたブタの心臓を、世界で初めて心臓疾患の男性に移植することに成功したと発表した。人間に移植できる臓器をつくりだす研究は各国で進められていて、将来的に移植用の臓器の確保につながる技術として期待されている。手術は7日に行われたが、3日後の10日現在も、男性の容体は安定しているという。

東工大,東大 低下した全固体電池性能を加熱処理 新技術開発

東京工業大学、東京大学、山形大学などの研究グループは1月7日、性能が低下した全固体電池を加熱処理で大幅に向上させる新たな技術を開発したと発表した。
同グループは、全固体電池の固体電解質と電極が形成する界面の抵抗が、大気中の水蒸気によって大きく増加し、電池性能を低下させることを発見。さらに増大した界面抵抗は加熱処理を行うことによって1/10以下に低減し、大気や水蒸気に全く曝露せずに作製した電池と同等の抵抗に改善できることを実証した。つまり、全固体電池の低下した性能を、加熱処理だけで大幅に向上させる技術を開発した。
高速な充電や高い安全性が期待される全固体電池は、リチウムイオン電池の代替に向けて活発な研究が行われている。しかし、固体電解質と電極が接する界面抵抗が大きく、充電に要する時間がリチウムイオン電池より長くなることが課題だった。今回の成果は、全固体電池の実用化に向け、大きく貢献するとみられる。この研究成果は2022年1月6日(米国時間)に米国化学会誌「ACS Applied Materials&Interfaces」にArticleとして掲載された。

日本触媒 阪大と素材表面に抗菌・抗ウイルス効果付与材料開発

日本触媒(本社:大阪市中央区)と大阪大学大学院工学研究科グループは1月7日、様々な素材表面に抗菌および抗ウイルス効果の付与が期待できるコーティング材料を共同開発したと発表した。
このコーティング材料は①フタロシアニン金属錯体による抗菌・抗ウイルス効果、酢酸セルロースによる接着機能を持つ②ヒトコロナウイルスを99.9%以上不活化した③衛生対策が必要な幅広い用途への利用が期待される-としている。日本触媒協働研究所(2017年4月、日本触媒が大阪大学大学院工学研究科に設置)で開発された。

JERA NEDO石炭ボイラのアンモニア高混焼技術開発・実証に採択

JERA(本社:東京都中央区)および三菱重工業(本社:東京都千代田区)は1月7日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業/燃料アンモニアサプライチェーンの構築プロジェクトで、石炭ボイラにおけるアンモニア高混焼技術の開発・実証に関する事業に応募し、採択されたと発表した。
この事業は、石炭ボイラに適したアンモニア専焼バーナを開発し、実機で実証運転することを目指すもの。事業期間は2021年度から2028年度までの約8年間。2024年度までにアンモニア専焼バーナを開発し、実施実証に向けて設備の基本計画を策定する。その結果を踏まえ、JERAの保有する三菱重工製の石炭ボイラで実証可否を判断する。実機実証では2028年度までに、ボイラ型式の異なる実機2ユニットで50%以上のアンモニア混焼を検証する計画。