自民党と日本維新の会による衆院議員定数削減法案は12月16日、今国会で審議入りできずに次期国会へ持ち越しとなった。自民・維新連立の今後を占う試金石と目されたが、連立の条件に掲げた法案だけに”熱い”維新と、冷静な自民、両党の姿勢は好対照だった。
ひたすら”前のめり”に、実現をはやる維新に対し、自民は先行法案の企業・団体献金の見直し協議との調整に追われるちぐはぐな展開が続き、時間切れとなった。その結果、発足2カ月足らずの連立政権は不安定さを露呈した。
これは、維新側が遠藤国会対策委員長(首相補佐官)以外に、国会運営を熟知した議員が少ないためだ。維新の吉村代表が野党の姿勢を批判し、早急な衆院議員削減法案の審議入りを促したが、流れは全く変わらなかった。自民幹部からは、衆院議員を10カ月経験しただけの吉村氏は黙っていた方がいいーーと冷ややかだったという。
こうした状況を見かねた高市首相は今国会の終盤、自民執行部に「維新の顔を立ててほしい」と要請。これを受け、鈴木幹事長が会期延長を示唆するなどして維新に配慮したものの、時すでに遅し、時間切れとなった。
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未成年者へのネットカジノ蔓延に対策を
未成年者のオンラインカジノ賭博が相次いで摘発されている。警視庁は2月以降、10都府県に住む13〜21歳の15人を常習賭博などの容疑で書類送検、もしくは児童相談所に通告した。いずれも暗号資産を使ってオンラインカジノで賭博をした疑いがある。
15人のうち9人は中高生で、このうち中学1年男子のスマートフォンには、わずか7カ月間で7,000回にわたり、計700万円を賭けた形跡があったという。しかも賭けを始めたのは小学6年の時だという。未成年者の間で、しかも小学生までにオンラインカジノが広がっていた状況は極めて深刻で、驚くほかかない。
未成年者への蔓延を防ぐためには、まずカジノに触れさせない環境をつくることが欠かせない。そのため、①子どもがスマホで閲覧できるサイトや利用時間を、保護者が制限する仕組みを使う②子どもが利用するサイトをあらかじめ把握しておく③カジノサイトへの接続を強制遮断する「ブロッキング」の導入ーーなども含め効果的な対策を早急に打ち出してほしいものだ。
国内でオンラインカジノを経験した人は337万人と推計されている。このうち10歳代は5.3%の18万人に上り、その7割近くは自分がギャンブル依存症だと自覚していたという。
本質議論”無視”の衆院議員定数削減法案
自民党と日本維新の会が、衆院議員の定数削減の段取りを定めたプログラム法案を国会に提出した。これは、”身を切る改革”を訴える維新が、自民との連立条件として求めていたもの。ただ、両党には微妙に温度差がある。自民には”問答無用”のこの法案提出に慎重論もあった。しかし、少数与党の現状、連立維持を優先させた。
その結果、国会や選挙のあり方など本質的な議論が全くなされないまま、維新に引きずられた、その根拠も明確になされないままの結論”むき出し”の、しかも欠陥だらけの乱暴な法案となった。
なんと衆院の協議会が1年以内に削減方法を決めなければ、自動的に小選挙区25、比例選20の計45議席を減らすという条項が盛り込まれている。期限までに与野党が合意できなければ、有無を言わさず定数を減らすというやり方は、ほとんど脅しに等しいものだ。
政治とカネの問題が相次ぎ、政治家への不信が国民の間にあるのは確かだが、だからといって定数を減らしても問題解決にはならない。今こそ定数だけに捉われず、難しい課題だが、民意を的確にくみ取る選挙制度の構築に向け、与野党挙げた真摯な議論が求められる。
米国はロシアの”やった者勝ち”を許すな!
ロシアのプーチン大統領が、モスクワを訪問した米国のウィトコフ特使らと会談した。米国側は、ウクライナを巡る最新の和平案を提示したが、プーチン氏は受け入れず、協議は継続となった。
ウクライナ国民にとって1日も早い戦闘終結が望みとはいえ、今は仲介人たる米国、トランプ大統領に何より優先、堅持してほしいことがある。それは、侵略戦争を始めたロシアに決して”戦果”を与えてはいけないということだ。
ウクライナに侵略戦争を仕掛けたロシアに、戦果を与えてしまっては、国際秩序は根底から崩れてしまう。”やった者勝ち”になってしまうのだ。冷静に第三者の視点でみれば、プーチン氏は戦争を仕掛け、何十万人ものウクライナの無辜(むこ)の人々の命を奪った、断罪されるべき国際的な”極悪犯罪人”のはずだ。
トランプ氏が、侵略された側のウクライナを屈服させて戦争を強引に終わらせれば、力による現状を認めることになる。それでは、外交で成果を挙げて、来年秋の中間選挙での勝利や、自身が狙いとするノーベル平和賞の受賞には、決して繋がらない。”平和の立役者”どころか、まかり間違えれば”平和の破壊者”の汚名を残すことにもなりかねないことを念頭に置いて、和平協議にあたることが求められている。
最終和平案の詳細は公表されていないが、とにかくトランプ氏は、プーチン氏に振り回されすぎる。ロシアに対する融和姿勢というより、ロシアに寄り添った姿勢には心底呆れるばかりだ。決して安易な妥協は許されない。
地方の税収 偏在是正へ税制見直しを
総務省の有識者検討会が地方税制に関する報告書をまとめた。税収の多い東京と、税収不足に悩む地方の格差が広がっているとし、国に対策を講じるよう求めている。
東京都の税収はどれくらいで、他の46道府県とどれくらい違うのか?2023年度の地方税全体に占める都の税収は、実に17.6%に上っている。税目別でみると、企業に課税する地方法人税では22.5%、土地の固定資産税では25.1%がそれぞれ都に入っている。
地方法人税は、地方に支店があっても、本社のある自治体に多くが入る仕組みとなっている。こうしてみると、東京に多く税収が集まるのは、一向に歯止めがかからない「東京一極集中」の進行という構造的な問題でもあるのだ。
総務省によると、人口1人あたりの地方税収額を比べると、都は最も少ない長崎県の2.3倍に上る。都が独自の施策を行う場合、住民1人あたり年28万円の予算を充てられるが、他の道府県では平均8万円にとどまるという。
こんな潤沢な税源をベースに、都の行政サービスは目を見張る物がある。子育て支援では、18歳以下に1人あたり月5,000円を給付している。今夏には水道の基本料金を4カ月間、無償とした。
自治体間の税源の不均衡を是正する措置としては交付税がある。だが、交付税措置だけでは、行政サービスを維持するのが難しくなっている自治体もある。算定方法を見直し、小規模自治体にも手厚い措置を講じる必要があろう。
地方が疲弊し続ける悪循環を断ち、国全体の活力を維持するため、時代の変化に合わせ、税源の偏在を早急に改めるべく、税制のあり方を見直すことが求められている。
今こそ根本的に中国依存型構造の見直しを
「対話探る日本」と「強硬姿勢崩さぬ中国」との間で日中対立は長期化する見通しとなった。そこでこの機会に、敢えて提言したい。日本は根本的に中国との関係を見直すべきなのではないか。具体的には官民合わせた中国依存型の経済体制の見直し、およびそこからの脱却だ。
中国の今回の抗日施策で象徴的なのが、観光業や水産業への攻撃だ。中国側が真っ先に打ち出したのが日本への事実上の渡航禁止、次いで日本産水産物の輸入禁止だ。中国側は、日本にダメージを与える効果的なポイントを熟知しているわけだ。日中関係がどれだけ順調であっても、中国の態勢が変わらない限り、いつ何時、同国とのビジネスでは不測のトラブル、いわゆる”チャイナリスク”がつきまとうことは避けられない。
だからこそ、このリスクをできるだけ小さくしようとするなら、同国とのビジネスを野放図に大きくしては、全社の経営そのものを危うくすることを、”肝に銘じて”置かなければならないのだ。
日本が観光立国を目指し、インバウンド消費拡大に軸足を置き、グローバルに観光・旅行者誘致に様々な施策を講じることに異存はない。その半面、全国の人気観光地が中国人旅行者を筆頭にオーバーツーリズムに頭を抱えていることも事実だ。また、福島第1原発処理水の海洋への放出を巡り、IAEAの安全の”お墨付き”があっても中国側は全く耳を貸さず、そして日本産水産物の全面輸入禁止に動いたのが中国だった。この際、ホタテなどの海産物の輸出先で圧倒的な比重を占めていたのが中国で、全国の漁業者、取扱企業含めて大打撃を受け、加工基地を含めた新たな販路開拓に取り組み、部分的に一定の成果を挙げたはずだ。この努力を地道に、着実に進めるべきだ。
次世代の日中関係を見据えるなら、これまでの対中国とのあり方や姿勢を、そのまま若い世代に押し付けてはいけないのではないか?これまでは中国共産党と、自民党を軸とする議員団が構築してきた関係だったが、日本の政界も自民党の凋落から支持層が多角化。戦争を知らない世代が全人口の大半になっても、いつまでも遥か昔に決着したはずの戦争責任について”謝罪”し続ける日本の政治姿勢に疑問符をつけ、うんざりしている若い世代は多い。
産業界にとって中国との関係は重要なものだ。したがって、決して中国から即刻撤退せよというのではない。要は中国とは一定の距離を取りつつ、中国の依存率を、政治・外交状況がどのように変化しようとも、3〜5年かけて現行の3分の1程度まで引き下げるべきだと言いたい。そのためには、グローバル・サウスの新たなサプライチェーンの構築や市場・販路開拓が求められることはいうまでもない。
?だらけの「副首都構想」目的が混在
自民党と日本維新の会が「副首都構想」の法案作成に向けた協議を始めた。両党は、2026年の通常国会で議員立法の成立を目指している。ただ、維新が掲げるこの副首都構想は様々な目的が混在していて、極めて分かりにくい。
維新が単独でまとめた素案は、副首都を「日本の経済成長を牽引する」都市と位置付けている。東京が被災した場合、省庁を一時的に移転する拠点とも表現している。
また、素案では副首都に指定した場合、国が国際会議場や交通網などのインフラ整備を支援するという。国の予算を使って大阪の都市基盤を強化できれば、との思惑も垣間見れる。そうであれば地元への利益誘導が露骨すぎる。
目的が①大規模災害によって、中央省庁などの機能が失われる事態に備えるため②東京以外の都市を整備し、東京への一極集中を是正するためーーなのか?また、副首都の指定を受けられる自治体を、東京23区のような特別区を設けた道府県に限定している点も?だ。
そもそも災害に備えることが目的であれば、首都直下型地震の懸念がある東京の代替地を、南海トラフ巨大地震の被害を受ける恐れがある大阪は候補地とはならないはずだ。
災害のリスクを分散するなら、省庁の移転先を大都市に限る必要はない。副首都とは別に検討すべき問題なのではないか?
日中緊張, 衆院議員定数削減など難題山積
自民党の高市内閣は今、物価高対策や衆院議員の定数削減の法案化や、突然降って湧いたような、首相の台湾答弁を巡る中国との問題など、国内外とも喫緊の難題山積で恐らく気を緩めるときがほとんどない状態が続いている。
働いて、働いて、働いて…覚悟はしていても、このうち中国との緊張関係は全く想定していなかったものだ。発端は、高市首相が国会で台湾有事に関する立憲民主党の議員の質問に対し、中国が台湾周辺を海上封鎖した場合、「存立危機事態になり得る」と答弁したことだった。存立危機事態は、日本が集団的自衛権の限定的な行使に踏み切る際の判断基準である。
これを受け事態は急変、矢継ぎ早に中国は激しい対日攻撃をエスカレートさせている。中国外務省は自国民に日本への渡航自粛を呼び掛け、教育省は”でっち上げ”の、日本の治安が不安定だという理由をつくり、日本への留学は慎重に検討するよう求めている。
事実を歪めた強硬な発言で相手国を動揺させ、自らに有利な状況をつくり出そうとするのは、中国の常套手段だ。具体的な根拠も示さず、たたみかけように日本を貶(おとし)めるような発言を繰り返す中国の姿勢はとても看過できない。
これに対し日本は、中国の一方的な対日非難を黙認せず、正当な抗議と辛抱強く誠実な説明の努力を続ける必要がある。あくまでも対話を通じ、冷静に解決策見出すしかない。日本は台湾の帰属に関する中国側の主張を尊重する。この点と、台湾周辺の武力紛争に関する日本の見解は、次元が異なる。
日本のこうした立場は、自民党を中心とする歴代内閣と同様、何ら変わらず一貫している。歴代首相は抽象的に表現するにとどめ、高市氏は歴代首相と差別化し、より具体的に説明、答弁したに過ぎない。不幸だったのは高市氏が過去、中国側が靖国参拝などで”保守タカ派”のレッテルを貼った人物だったことが災いしたのだ。
とはいえ、日中の今回の緊張関係と交流見合わせは簡単には溶けそうにない。中国が高く振り上げた拳(こぶし)は下ろせないからだ。したがって、異常事態の長期化は避けられないようだ。
もう一つ急がれるのが衆院議員定数削減問題だ。削減数、削減時期の実務者協議で11月中の法案提出へ詰めの議論の行方が注目されている。両党内では、選挙制度改革の検討を法案に盛り込む案も浮上している。今国会で法案の取りまとめができなければ自民・維新の連立政権合意書の精神が崩れるのではないか?との見方もあり、安易に先延ばしできないのだ。
斎藤知事を不起訴 最悪の先例 神戸地検
神戸地検は11月12日、昨年11月の兵庫県知事戦で選挙運動の対価をPR会社、メ゙ルチェ(兵庫県西宮市)に支払ったとして公職選挙法違反容疑で告発された斎藤元彦知事と、同社の女性代表について、いずれも嫌疑不十分で不起訴にした。
この案件、請け負った当事者が「斎藤氏側から広報全般を任され、運用戦略立案、コンテンツ企画などを責任を持って行った」とネットに投稿していた。本人が認識していたかどうかは別にして、十分”クロ”としか言いようがない。これでも違反にならない公選法とは何なの?と声を大にして言いたい。
神戸地検は「選挙運動の対価と言えない」と判断し、最悪の先例を作った。今後の様々な選挙でこの種の案件は続出すると思われる。これを不起訴にした”ツケ”は極めて大きい。今後、スレスレの案件が横行することになるのではないか。
公選法は、ネットの選挙運動で主体的に企画立案した業者や個人へ対価の支払いを買収、受け取りを被買収として禁じている。告発容疑は斎藤氏側が買収、PR会社代表が被買収。最大の焦点は、斎藤氏側から支払われた71万5,000円が選挙運動の対価にあたるかどうかだった。