「新技術・新開発」カテゴリーアーカイブ

政府の生命倫理調査会 iPS細胞から受精卵作製認める

政府の生命倫理専門調査会は7月24日、不妊症や遺伝性疾患の研究に限定して、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)などからつくった卵子や精子による受精卵の作製を認める報告書を大筋で取りまとめた。培養期間は通常の受精卵研究と同様、最大14日まで。ただ、人や動物の子宮への移植は禁止する。政府はこの報告書に基づき、関連指針の改正などを検討する方針。

手術支援ロボ「ダビンチ5」大阪などの病院で国内初手術

手術支援ロボット「ダビンチ」の最新モデル「ダビンチ5」が日本に導入され7月22日、大阪の病院などで国内で初めての手術が行われた。
米国企業が手掛けるダビンチは、医師がモニターで映像を確認しながら、アームの先端についた”かんし”やメスなどを使って、患部を切除する医療機器。人間の手首以上の複雑な動きや、手ぶれの補正ができるのが特徴で、世界71カ国で使われている。
ダビンチ5は、10年前の機種と比べ、映像の解像度がおよそ4倍高くなったほか、器具で押し引きする感覚がセンサーを通じて医師の手にも伝わる機能などが追加されている。その結果、よりきめ細かい手術などが可能となり、患者の負担軽減につながることが期待されている。
22日は、大阪・天王寺区の大阪警察病院でダビンチ5による、70代の女性の直腸がん患者の手術が行われた。このほか同日、埼玉県、神奈川県でもダビンチ5を使った手術が実施された。

大成建設 時速60㌔走行のEVに電極埋設道路で無線給電

大成建設(本社:東京都新宿区)は7月18日、舗装時に埋設した電極を通じ、時速60kmで走行する電気自動車(EV)に無線で給電する技術を開発したと発表した。福島県田村市のグループの研究開発拠点に、無線給電できる道路を20m設けて実証した。
従来の無線給電は車が停止した状態か、低速で走行する場合に限られており、高速走行車の給電は国内初という。同社はこの技術を活用し、”無線給電道路”として高速道路などへの採用を目指す。

がん治療薬の効果高める腸内細菌”YB328”発見 がんセンター

国立がん研究センターなどのグループは7月14日、がんの治療薬の効果を高める腸内細菌を発見し、薬とともにマウスに投与することでがんを小さくする実験に成功したと発表した。グループは、薬の効果が低い患者に対する新たな治療法の開発につなげたいとしている。
同グループは免疫療法の薬で治療を受けたがん患者50人から便を採取し、薬の効果と腸内細菌の関係を調べた。その結果、薬の効果が高かった患者は「YB382」という腸内細菌が多いことが分かった。
そこで、がんのあるマウスから腸内細菌を取り除いたうえで、YB328と、薬の効果が低かった患者から採取した別の腸内細菌を薬とともに、それぞれ投与して比べたところ、YB328を投与したマウスではがんが小さくなった。これにより、グループはYB328が、がんの治療薬の効果を高めていると結論付けた。グループはYB328を使った飲み薬の開発につなげたいとしている。

滋賀県草津市 人工衛星で水道管の漏水を把握 県内初導入

全国で水道管が破損し、地表に水があふれる事故・被害が続出しているが、滋賀県草津市はこのほど、人工衛星を活用し、地下で起きた水道管の漏水を早期に発見する取り組みを6月から県内で初めて導入したと発表した。
これは人工衛星から地面に特殊な電波を照射し、地中で漏れた水道水特有の反射波のデータをAI(人工知能)が解析することで、水道管の漏水が疑われる地点を見つける仕組み。地下およそ3m、半径100mの範囲で特定することができるという。
草津市によると、現地で探知機などを使った市内全域の水道管調査で5年かかっていたが、人工衛星を使うことで1年半に短縮できるという。市ではこの取り組みにより、効率的な修繕につなげたいとしている。

大阪大学病院 3つ子などの「減胎手術」の外来診療開始

大阪大学医学部附属病院はこのほど、3つ子などを妊娠した場合、母体を守るため、人工的に胎児の数を減らす「減胎手術」の外来診療を開始したと公表した。公的な医療機関が減胎手術を念頭にした外来診療の実施を明らかにするのは初めてとみられ、同病院は妊婦が安心して手術を受けられる環境づくりにつなげたいとしている。
減胎手術は母体を守るため行われているが、国内ではルールが十分正母されておらず、一部のクリニックを除き、手術の実施を公にしていないという。同病院では3つ子以上の妊婦と、双子を妊娠し、重い合併症がある妊婦合わせて10人を対象に減胎手術の臨床研究を行ったうえで、今回外来診療を開始。これまでに2人の妊婦に対して手術を行ったという。

ヤンマーHD シラスウナギ飼育コスト1/20 水産庁委託事業

ヤンマーホールディングス(本社:大阪市北区)は7月8日、シラスウナギの生産コストの大幅な削減に寄与するウナギ種苗量産用水槽を開発したと発表した。これは水産庁の委託事業「ウナギ種苗の商業化に向けた大量生産システムの実証事業」で、国立研究開発法人 水産研究・教育機構、一般社団法人マリノフォーラム21との共同事業。
量産用水槽では、1水槽あたり約1,000尾のシラスウナギの生産に成功。従来の大型水槽と比べ1尾当たりの飼育コストを約20分の1(1,800円程度)に削減できたとしている。特許も取得済み。
今回開発した量産用水槽は直径が40cm、軸長150cm。ヤンマーの流体解析技術により、水槽内の流れ場の最適化を図った。部材は繊維強化プラスチック(FRP)製で、耐久性とコスト競争力に優れている。

川崎重工 台湾の鴻海科技Gと看護師補助ロボを共同開発

川崎重工は7月4日、電子機器受託製造で世界最大手の台湾企業、鴻海科技グループ(フォックスコン)と提携し、看護師補助ロボット「Nurabot(ヌーラボット)」を共同開発したと発表した。2026年の市場投入を目指し、2025年4月より台湾の国立病院、台中栄民総医院(所在地:台中市)で実証実験を実施中。
ヌーラボットは、川崎重工が開発した自律走行型ソーシャルロボット「Nyokkey」をベースに、看護師の業務補助を目的に、特別に設計したロボット。物を掴むことができる2本の腕、荷室、自走機能を有しており、主に採血した検体の輸送、薬剤の輸送、入院時の施設案内、患者向けの衛生教育などの業務を看護師に代わり担う。

京大 マウスでES使い卵子の元”卵母細胞”の大量作製に成功

京都大学の斎藤通紀教授らのグループは、マウスの実験で、体の様々な細胞に変化できるES細胞を使い、卵子の元になる細胞「卵母(らんぼ)細胞」を効率よく大量につくり出すことに成功したと発表した。1回の実験で、従来の10倍から100倍ほど多くつくることができたという。
これまで必要とされてきた、卵巣の細胞を使わずにつくることができ、グループは卵子ができる詳しいメカニズムの解明や、不妊治療の研究につながる成果だとしている。

国循 3Dプリンターで作る心臓模型が保険適用 心疾患に朗報

国立循環器病研究センター(国循、所在地:大阪府吹田市)は7月2日、生まれつき心臓の構造が正常と異なる先天性心疾患の手術に際して、3Dプリンターで作る心臓模型の使用が保険適用されたと発表した。この心臓模型は国循とクロスメディカル(所在地:京都市)が共同開発。2023年に医療機器として承認されている。
先天性心疾患はおよそ100人に1人の割合で発症するとされる。心臓の構造が複雑なうえ、症状も様々で個人差が大きく、一般には手術の難易度が高い。そこでこの模型を使った事前のシミュレーションによって、手術の精度や安全性の向上が期待され、当該患者には朗報だ。