「新技術・新開発」カテゴリーアーカイブ

日本製紙 木質由来のCNF使い蓄電部材を開発 脱炭素で

日本製紙(本社:東京都千代田区)は4月22日、木質由来の極細繊維、セルロースナノファイバー(CNF)を使用した蓄電部材を開発したと発表した。レアメタルや有機溶媒を使用しないため、材料の安定調達や製造時の二酸化炭素(CO2)削減に役立つ。
シート状にしたCNFを電極で挟み直接蓄電する。パルプを化学処理することで、従来10ナノメートル(ナノは10億分の1)あった繊維幅を、2〜4ナノメートルほどまで薄くし電気抵抗を減らした。実用化に向けた性能評価を進め、2030年までにウエアラブル端末や小型のIoTセンサーなどへの適用を目指す。

富士通, 理研 世界最大級256量子ビット超伝導コンピュータ

富士通と国立研究開発法人 理化学研究所は4月22日、新たに開発した高密度実装技術により世界最大級となる256量子ビット超伝導量子コンピュータを開発したと発表した。両者はこの最先端量子コンピュータを、ハイブリッド量子コンピューティングプラットフォームを通じて、2025年中第一四半期中に企業や研究機関に向けて提供を開始する。
ハイブリッドプラットフォームの計算能力が64量子ビットから256量子ビットへ4倍に拡大したことにより、利用者は従来よりも大きな分子の解析はじめ、様々な実証実験が容易になる。

大阪大グループ iPS細胞から「ミニ肝臓」作製に成功

大阪大学などの研究グループは、人の細胞から本物と同じような内部構造を持つ0.5ミリほどの大きさの「ミニ肝臓」をつくり出すことに成功したと発表した。同グループの研究論文が科学誌「ネイチャー」に掲載された。
iPS細胞から肝臓の細胞を作製し、ビリルビンなど肝臓の働きに関わる物質を混ぜるなどして培養したところ、肝臓の細胞が3つの」層をつくって固まり、0.5ミリほどの大きさの立体的なミニ肝臓ができたという。
内部の3つの層は栄養分の合成や分解などそれぞれ別の役割を担っていて、このミニ肝臓を重い肝不全のラットに移植する実験では、1カ月後の生存率が50%余りとなり、3層構造ではないものを移植した場合と比べて高かったという。3層構造を実現したミニ肝臓は本物の肝臓のすべての機能を補うことができる可能性があり、様々な応用が期待される。

京大病院が治験 パーキンソン病 iPS細胞で症状改善

京都大病院は4月16日、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)からつくった神経細胞をパーキンソン病の50〜69歳の患者男女7人の脳に移植した治験結果を発表した。このうち6人で治療効果を調べたところ、4人で症状の改善がみられ、介助が要らなくなった人もいた。この結果を踏まえ、今回の治験に協力した住友ファーマなどは、年度内にも国に細胞製品の製造販売について承認申請する見通しだ。
パーキンソン病は、脳内で運動の調節に関わる物質ドーパミンをつくる神経細胞が減少して発症する難病。手の震えや歩行困難になったりする。根本的な治療法はなく、ドーパミンの分泌を促す薬で症状は抑えられるが、進行を止めるのは難しいとされる。国内患者数は推計29万人、世界では1,000万人を超える。50歳以上で発症することが多い。

関西医科大, 島津製作所 光免疫療法の治療効果可視化で治験 

関西医科大学(本部所在地:大阪府枚方市)と島津製作所(本社:京都市中京区)は4月15日、光免疫療法の治療効果を可視化するための臨床研究を開始すると発表した。研究では、切除不能な局所進行または局所再発が見られる頭頸部がん患者を対象として、光免疫療法の術前・術中・術後の正確な診断、手技、評価の実現性の検証などを実施する。研究期間は2025年4月1日〜2027年9月30日まで。
光免疫療法は、がん細胞に特異的に結合する抗体と光感受性色素(IR700)を組み合わせた薬剤の投与後、がんに対してレーザー光を当てることで細胞死を引き起こす、がんの新しい治療法。

京大病院 iPS 1型糖尿病治験 膵島シート移植 国内初

京都大学附属病院は4月14日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って重い1型糖尿病を治療する治験で、国内初となる1例目の手術を行ったと発表した。手術は2月、京大病院で40歳代女性に行われ、移植細胞からインスリンが出ていることが確認された。患者はすでに退院したという。治験の対象は20〜64歳の重篤な患者3人。移植する細胞数は2,3例目で段階的に増やす予定。
この病気は10〜15歳の発祥が目立ち、患者は国内に推定10万〜14万人。通常、毎日数回のインスリン注射が必要だ。重篤な患者が血糖値をうまくコントロールできなければ、低血糖になって意識を失い、死亡する危険性もある。自己注射に代わる治療法が求められており、代替治療の確率への期待が高まりそうだ。

阪大発ベンチャー iPS心筋シートを製造販売承認申請 世界初

大阪大学発ベンチャー企業、クオリプス(本社:東京)は4月8日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から心臓の筋肉(心筋)の細胞シートをつくって心臓病の患者に移植する治療に使う、同シートの製造販売承認を厚生労働省に申請した。対象となるのは、心筋梗塞などで心臓の動きが悪くなる「虚血性心筋症」の患者の治療。悪化すると心臓移植などが必要になるが、国内では臓器提供者が少ない現状がある。
同シートの移植を受けた8人全員で安全性を確認。社会復帰も果たしているという。iPS細胞を使った医療用製品の承認申請は世界初とみられる。なお、同社が作製したiPS細胞由来の心筋細胞のシートは、13日開幕の大阪・関西万博で展示される。

東大 水素とベンゼン環を同時合成 安価な金属触媒開発

東京大学の山口和也教授らは、安価なニッケルを使い、ベンゼン環を持つ有機分子と水素を同時につくる触媒を開発した。これまでは高価なパラジウムが必要だった。この成果は、英科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載された。
研究チームは、酸化セリウムとニッケルの微粒子からなる固体の触媒を開発した。開発した触媒を使った反応で、原料として使える物質は45種類以上見つかった。
ベンゼン環を持つ有機分子は医薬品などの原料として、水素は燃料として使えると期待される。

関電 4月から水素混焼発電 実証実験 万博に電力供給

関西電力(本社:大阪市北区)は3月28日、姫路第2火力発電所(所在地:兵庫県姫路市)で、燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を燃料に混ぜて発電する「水素混焼発電」の実証実験を4月から始めると発表した。発電した電力は、同月13日に開幕する大阪・関西万博会場に供給する計画だ。
実証実験では、燃料に使う液化天然ガスの最大30%(体積比)を水素に置き換え燃焼する。90分間発電した場合、30トン程度のCO2削減につながるという。発電能力や設備などへの影響を検証したうえで、2050年までに、水素だけで燃やす「水素専焼」の実現を目指す。

世界初 和歌山 JR初島駅で3Dプリンター使い新しい駅舎

和歌山県有田市のJR初島駅で3月25日、世界で初めて3Dプリンターを使って新しい駅舎が建設された。駅舎は高さ2.6m、広さはおよそ10㎡。屋根や駅など4つのパーツがトラックで運び込まれ、クレーンなどを使って組み立てられた。工事はおよそ6時間で終了した。JR西日本によると、3Dプリンターを使用した駅舎の建設は世界で初めて。
これらのパーツはあらかじめ、セレンディクス(所在地:兵庫県西宮市)が3Dプリンターを使いモルタルで型枠をつくり、内部に鉄筋コンクリートを組み込んだもので、耐震性は鉄筋コンクリート造りの住宅と変わらないという。